チュン…チュン……チュンチュン…
……ちゃん!……
……おじーちゃん!!…
起きてー!うーん、むにゃむにゃ……
ふぁー、よく寝たわい……
私の名前は半袖。85歳。
趣味はペンシルパズルである。
50年後のペンシルパズル界情報@:
半袖は85歳だ。そう、私がこの記事を書いているのは2068年。
「50年後のペンシルパズル界を妄想する」という50年前の私の無理難題なブログ記事にこたえる形で、50年後の未来から自ら記事を執筆することになった。

紹介が遅れたが、先ほど私を起こしに来たのは孫の袖男。
今は息子夫婦と3世代同居で暮らしている。
…えっ?あの半袖が結婚できるわけがないって!?
…大丈夫。きっと大丈夫だ。…あぁん?大丈夫だって!
というか私の話はどうでもよい。
今日は「50年後のペンシルパズル界」の話を垂れ込むのが私の役目だ。
ちなみにこちらの本日の日付は2068年の12月10日。
そう、「パズル通信ニコリ」の発売日である。
そろそろ掲載誌が届く時間帯だ…
\パタパタパタパタパタ…/
袖男:
おじいちゃん!窓の外に何か飛んできたよ!
50年後のペンシルパズル界情報A:
掲載誌はドローンで届けられる。よかった。ここ最近3号全ボツだったが、今月は掲載されたようだ。
これで1998年から70年連続本誌掲載の記録を達成である。
50年後のペンシルパズル界情報B:
ニコリは365号だ。老舗パズル雑誌ニコリも、ついに365号。
今号は365という数字にちなんで、「1年」を特集としたパズルが多く掲載されているようだ。
中央の馬のイラストが気になった方もいるかもしれない。
…そう、残念なことにこれがニコリキャラクター・ニコリ氏の現在の姿だ。
年数経過による激しい作画崩壊により、今や創刊当初の凛々しい面影は微塵も感じられない。
半袖:
さてさて、私はなんの問題が掲載されたのかな…袖男:
あっ!おじいちゃんの名前発見!
私の問題は1問掲載された。へやわけの1番だ。
このパズルともずいぶん長い付き合いになる。
ちなみに2068年現在、自力でパズルを作っている人はほとんどいない。
50年後のペンシルパズル界情報C:
パズル制作はコンピューター作成が主流に。優秀なパズル制作ソフトの登場により、多くのパズル作家が手作りからコンピューター作成に舵を切り替えたのが2030年ごろ。
2068年現在では、各作家が自分に合うパズル制作ソフトをカスタマイズしながら、自分の作風を機械学習で最大限に表現することに力を注いでいる。
ちなみに私のへやわけソフトの評価関数は、易しめ手筋を高めに評価しつつ、0の部屋を多めに入れるようにカスタマイズしている。
さて、ニコリ365号の中身をちょっと見ていこう。

鍛治社長の雑文はまだまだ連載中だ。
御年117歳。現在も海外でパズルの布教中。
もう30年日本に帰っていないらしい。
袖男:
ヤッター!ポチポチコンテスト掲載された!半袖:
おぉっ、やるなぁ袖男。立派なナスカの地上絵だね。ということで、ニコリの誌面自体は2018年の皆さんの時代とほとんど変わっていない。
あと50年は確実にニコリのペンシルパズルが解けるということだ。
よかったね。
ただ、一点だけ大きく変わった部分がある。
50年後のペンシルパズル界情報D:
ニコリ本誌がすげー高い。9,720円。なんと50年前の10倍である。
皆さんの時代でもニコリ本誌はセコセコしく値上げを続けていたと思うが(怒られそう)、その比ではない。
というのも2068年に「本」は存在しないのだ。
2018年からそう遠くない時期でほとんどの本が電子書籍に置き換わり、「印刷」という技術は今や伝統工芸のようなものになっている。
その中でも「紙と鉛筆で解く」にこだわったニコリは、今では世界でも片手で数えるくらいしかない「本を出版する会社」になった。
ちなみに鉛筆もものすごい高くて、皆さんの時代の高級万年筆くらいの値段である。
あー、50年前に買い溜めしておけばよかったよ。
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ということで50年後のペンシルパズル界の概況を、2068年の半袖(85歳・趣味は孫とペンシルパズル)がお届けした。
この情報を垂れ込んでしまったことで、皆さんの50年後のペンシルパズル界にわずかながら歪みが発生してしまうかもしれないが、まーたぶん50年後もみんな平和にペンシルパズルを解いていることだろう。
ラブアンドピース。アンドペンシルパズル。
2068.12.10 半袖
ペンシルパズル Advent Calendar 2018 2日目。半袖がお届けいたしました。